
魚

料理
何度と無く繰り返し手馴れた包丁捌き。

包丁を眺めていたジビエは数年前、
初めて釣った魚と、それを捌いた事を思い出していた。
ジビエは北Q州市に生まれ、そしてこの地で育った。

豊富な文化と豊かな自然に恵まれた環境の中、
少年ジビエは日々野山を駆け巡り、海川で日がな遊ぶ少年期を・・・
過ごしていなかった。

超インドア派という性格は青年期に入っても変わらず
学校に行って、バイトをして、漫画やゲームを読む生活。
毎日続く同じような生活は、学生時代の食生活にも現れていた。

毎日毎日同じ食事のルーチン。
同じように20数年間、変化の無い単調な生活。
化学調味料にまみれた食生活と同じように、
普段の生活も代わり映えの無い日々であった。
そんなある日のこと。


(・・・。)
(・・・ったく。TVはいつもいつも・・・)

(
『美味しい』以外言えんのか?)
(・・・一皿数千円も出せば、そりゃ美味しいもんがでてくるだろ。)
(オレならもっとマシなコメントが出来・・・

・・・
あれ?)(でも俺、いつもこの弁当食べてるけど・・・)
(美味しいから食べてるんだッけ?)(毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日・・・同じ物喰ってるし)
(今、正に弁当を食ってるんだが・・・)
(どんな味がしてるか・・・覚えてねぇ)

(オレ・・・毎日ナニ喰ってるんだ?)
自分の食べている物にすら疑問を持たなかった事は
自信の過ごしてきた人生に何の疑問を持たなかったことと同じであった。
これから先も『何かわからないもの』を考えもせずに食べ続けるように、
よくわからないまま、何の疑問も持たずに流されるような人生を過ごしていいのだろうか・・・
ジビエは人生に変化が必要だと感じた・・・


魚釣りジビエが出した『変化』に対する答えが、釣りをしてみることであった。
別に誰かに薦められたり、誘われたりしたわけではなかった。
ただ、これまでやったことが無いアウトドアと言う世界と
自分の釣った魚を自分で捌いて食べてみるといった経験から
食と人生に少しだけ変化をもたらすことが出来るのではないか・・・
そんな安易な理由であった。
5月某日。
初めての釣りでジビエは・・・
何も釣れず。
釣りにすらなっていなかった。
アウトドア全くの初心者のジビエにとって、チヌ釣りは難を極めた。
(なぜ釣具店は、全くの初心者にサビキ釣りや投げ釣りを薦めなかったのか未だに疑問)
次の週、2度目の釣行でもボウズ。これもまた釣りにならず。
そして3度目の釣行、
やはりトラブルが頻発。
周りは釣れているのに、
一向に自分のウキには変化が無い。
撒き餌も残り数投。
「もう、2度と釣りなんかするものか・・・」
そんなボヤキがでた時だった。


ジビエは初めて感じる竿の振動に興奮した。
『チヌ』という魚が掛かったと確信した。
そしてジビエは震える手で魚を抜き揚げた。

3度目の釣行で
15cm程度の子アジが1匹
釣れた。


そもそも自炊すらしたことが無いジビエにとって、
釣りと同様、魚を捌く事は難を極めた。
至難の末、15cm程度の子アジから僅か一切れの切り身が出来上がり、
それを食した。

スーパーの半額で売られているそれとはまるで異なる外見。
おそらく店で提供されればクレーム必須の味。
しかしジビエは・・・

初めて苦労をして獲物を捕獲し、
初めて食べるために生き物を殺し、
初めて料理して頂いたこと。ジビエの放った
『美味しい』と言う言葉は命に対する感謝の気持ちがこもっていた!
そしてジビエは釣りの世界にのめり込んだ!
ジビエはいつも一人で釣りに出かけた。
はたから見ると孤独な男だったが、毎度同じ人と同じような釣りをするよりも、
あらゆる釣りのスタイルで多くの魚と出会う事がジビエにとっての楽しみであった!

それまでの
無味乾燥な人生とは一転して釣魚の種類と料理の腕が向上するごとに、
これまで代わり映えのしなかった人生に思い出が刻まれていった!

またジビエは、釣り以外にも『
命を食べる』事に興味を持ち始め、多くの人から影響を受けた!


自分の獲った肉を食べてみたいと感じた。ジビエは
狩猟に挑戦することを決めた。
「知らない人が見たらゴミに見えるかもしれないけどそれを糧に生活していた時代もあるの。
現代にそれを再現できれば、面白いと思わない?」

道端に生えている植物にも食べられる種類があり、
『雑草』にも名前があることを学んだ。
こうしてジビエは、狩猟、釣り、採集、突漁、罠・・・あらゆる手段で食料を手にしてそれを食することに命を賭ける

\ごちそうさまでした!/
ちょっとだけ変わった『孤独のジビエ』
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