2015年8月某日




（・・・・・・。）


 

おーい、そこの人！ あんたジビエさんだろ？

（！？）







「え～っと、あなたは？」

お、いきなりすまねぇな。俺の名前はフェンリル。 今日は住む家を探しに、わざわざ東京から来たんだってな？ ダンナから面倒見てやれっていわれてんだ。よろしくな！

「あ、よろしく、フェンリルさん。」

フェンでいいよ。 ・・・それにしてもあんた、こんな仕事が無い町に 東京からよく移住してくる気になったな～。 なにかダンナから、ウマいビジネスの話でも聞いたのか？

「それは・・・・・。」

[続きを読む]

[続きを閉じる]

＜前回はこちら＞






「高知の東洋町？
それって移住しろってことですか？」

キミの考えていた狩猟ビジネスは、 里山ビジネスの一環として今からでも始めることができる。 もし、本気でこの世界に進みたいのであれば、 すぐに東洋町でスタートアップを始めるべきだ。

「でも、里山ビジネスってまずは、
基盤となる農業を経営しないといけないんですよね？

はっきり言って、農業なんて儲からないと思うんですが？
・・・てか、儲からないから里山が荒廃しているわけですし。」

ふむ・・・ジビエくん。農業には 『儲かる農業』と『儲かってはいけない農業』 の2種類がある事を知っているかね？

「え？儲からない農業ではなくて、儲かっては『いけない』農業？」

そう、それは・・・ 『ビジネス農業』と 『国民農業』だ。

「ビジネス農業ってのは意味がわかりますが・・・国民農業？」


 
 

国民農業とは簡単に言えば、国家が管理している 国民を餓死させないための農業だ。

「国民を餓死させないって・・・
今の日本は食糧の60％以上輸入してるんですよ？
別に国内で生産しなくても餓えることは無いんじゃないですか？」

では、食料の輸入がストップする有事が起こったら、 どうするかね？

「輸入がストップって・・・要するに戦争ってことですか？」

うむ。国家は戦争により食料資源の輸入がストップした際に備え、 必ず『国民を餓えさせない最低限の食料生産力』 を持っておく必要がある。 つまり国民農業とは、『生産物で利益を生む』事を目的とした ビジネス農業とは異なり、『農業を維持し続ける事』に 意義があるのだ。

「ああ～、よく農業は国の補助で厚く守られているって言われているのは、
そのためだったんですね。」

そうだな。しかし、国民農業はそのシステムに乗っかっている以上、 国の政策に沿った農業を行わなければならない。 つまり、簡単に経営方針を変えたり、辞めたりする事はできない。 『儲けを出す事はできないし、辞められない。でも絶対に安泰』 なのが国民農業なのだ。

「里山ビジネスは利益を出して多角経営化する事がビジネスの目標
だから、必然的にビジネス農業の道を進む事になるんですね。」

うむ。君の考えていた農業のイメージが 儲けを出してはいけない国民農業だったから、 『農業は儲からない』という固定観念が付いていたのだ。 実際の農業は、いくらでも利益を上げる事ができるビジネスだ。

「ん？でもチョット待ってください。その国民農業の話って、
『農業は儲けることができるか？』という質問の回答ではないですよね？
実際のところ、ビジネス農業は利益を出せるんですか？」

  

それは企業努力しだいだ。 生産性の拡大、販路の拡大、資産の運用など、 あらゆる会社がやっている事と同様な事を行わなければ、 当然利益は出せない。 ビジネス農業はあくまでも『製品が農産物』というだけであって、 実態は製造業と変わらないのだからな。

「うう～ん・・・
じゃあ、やっぱりビジネス農業って絶対に利益が出ないですよ。
だって競争相手になる国民農業って、いうなれば『特権』を持つ
相手ですよね？

例えば、車を製造する2つの会社があったとして、
一方は国からの援助をバンバン受けて車を作り
もう一方は企業努力だけで車を作る。
そんなの価格で競争できないですよ！！」

・・・・・ジビエくん。 国民農家は国家が戦争状態になった際も 食料を生産し続けるために必要だと言ったね？

「はい。万が一戦争が起こったら頼れるのは自国民の
食糧生産力ですからね。」

実を言うと、現代社会では 戦争は絶対に起こらない。よって、 国民農業も必要ないのだよ。

「はぁ！？絶対に戦争が起こらない！？
なんでそんな事を断定できるんだ！？」

いいかね？『戦争』というものは、そもそも 『イデオロギーの衝突』によって引き起こされるのだ。 そのイデオロギーとはこれまで 『血縁』であったり『宗教』であったり、 『国家』であったり『経済圏』であったりしたわけだ。

「イデオロギーって言い換えると、『つながり』って感じですかね？」

では、ジビエくん。 現代におけるイデオロギーとはなにか、 わかるかね？

「うう～ん、なんだろう・・・・やっぱり国家じゃないんですかね？」

国家がイデオロギーであり続けたのは 国家間に大きな経済格差があった時代までだ。 「国が豊かになれば、自然と自分達の生活も豊かになる」 という思想が共通認識としてあった時代だな。 だから、自国を裕福にするために国家間で戦争が起こったのだ。

では現代はどうだね？多くの国家は数値上豊かになっている。 しかし、すべての国で富の局在化がおき、豊かな国家の 中にも『裕福と貧困』が共存するようになっている。 誰一人として、「国家が豊かになると、自分達の生活が豊かになる」 とは考えなくなった。つまり現代では 国家というイデオロギーは陳腐化しているのだよ。

「う～ん・・・要するに、
GDP世界3位の日本と、世界7位のインドを比べたとき、
国家としての豊かさは日本の方が上だけど、
インドの裕福層は日本の裕福層と同等以上に富を持つし、
日本の貧困層はインドの貧困層と同等以下に富を持たない。

つまり、現代は国家の裕福・貧困で線引きするよりも、
個人レベルで富を『持つ者』と『持たざる者』で線引きしたほうが
現代社会のうまく言い表せている・・・って事ですかね。」

そうだ。つまり現在の世界は 『持つ者』と『持たざる者』という 二つのイデオロギーにより成り立っているのだ。

「でも、大丈夫ですよ。」

？

「日本の裕福層は日本のためにお金を廻しますし、
インドの裕福層もインドのためにお金を廻すでしょう。
裕福層がお金を使うから貧困層にもお金が流れるんですから、
富の局在化が起こったからといって、問題になるとは思えませんね。」

・・・それが違うのだよ。

「え？」

言ったように、『持つ者』と『持たざる者』はイデオロギーだ。 すなわち、 『持つ者』は『持つ者』同士で繋がり、 より多くの富を生み出す。 その繋がりには、国家や人種といった線引きは存在せず、 全世界の富を『持つもの』だけが繋がるのだ。

そしてこれこそが、 民族主義、国家主義、 資本主義・社会主義に続く 新しく世界の秩序となろうとしてる『主義』、

 

グローバリズムが成熟した世界では、 世界中の『持つ者』同士が繋がり、資源(ヒト・モノ・カネ）を享受しあう。 この繋がりには国家という枠組みは関係ないため、 当然、国家の戦争は起こりえない。 食料資源は世界中の『食料を持つ者』から購入すればよいため、 国民農業という枠組みはもはや必要なくなるのだ。

 
「ちょ・・・・チョット待ってください！
国家間の戦争が起きないってことは、
世界が平和になるとでも言いたいんですか！？」

国家の戦争は起こらない。しかし、 『持つ者』と『持たざる者』の間で争いは起こる。 いわゆるテロリズムだ。

 「テロリストというと、ISISみたいな？」

ISISも1950年代に起こったイラン石油権益問題に端を発する、 反資本主義によるテロリズムだ。 今後も『持つ者』と『持たざる者』の差が開き続ければ 反グローバリズムを訴えるテロ組織が世界中に 増えてくる事は間違いないな。

ココまでの話をまとめて、 『なぜビジネス農家は儲かるようになるのか』だが、 　１． 世界はグローバリズムの流れが加速し、 　　　 富を『持つ者』同士でイデオロギーが形成される。 　２．各国の『持つ者』が繋がると国家の戦争が起こることは 　　　なくなるため、国民農家は必要なくなる。 　３．食料は食料資源を『持つ者』から購入すればよくなるため、 　　　ビジネス農家は全世界の『持つ者』と繋がることができ、 　　　より多くの富を得られる。 と言うわけだな。

「ううむ・・・一つお聞きしたんですが、そこまでグローバリズムが進むと、
国家という枠組みはなくなって、国境も通貨もなくなるんですかね？
そんなことは絶対に起こらないとおもうんですが。」

国家という枠組みはあり続けるよ。 なぜなら、そのほうが『持つ者』が『持たざる者』 をコントロールしやすいからね。

「コントロール！？」

いいかね？ 『持つ者』が最も恐れるのは、さっきも言ったとおり、 『持たざる者』が団結して、 大きなテロリズムになる事だ。 それを阻止するためには、『国家』という枠組みを利用して、 お互いが団結しないように反目させ続ける事 が一番なのだ。

「要は・・・近年凄く増えている反日や反米、反中などの運動は
『持つ者』に仕組まれているってことですか？」

その通りだ。 来もしない最終戦争の幻想を追わせておけば、 フラストレーションも発散され、団結される事もない。 いわゆる『ガス抜き』だ。

「くそぉ～・・・・許せないッ！」

・・・許せない？ ジビエくん、君の許しがなくても世界は変わる。 拡大するテロリズム、TPP問題、共通通貨、上辺だけのヘイトスピーチ、 あらゆる事象がグローバリズムへと進んでいるのだ。 その流れを否定するのは構わないが、それは 『持たざる者』であり続けることを容認しているのと同じだよ。

「ううむ・・・。」

よく考えてみたまえ。 理想を語り『持たざる者』になって、最悪テロリストへ転げ落ちるか、 『持つ者』となって、 自分の手の届く範囲の人たちを幸福にするか、 君はどちらを望むかね？

「・・・。」

農産物は今後市場は広がり、里山から得られる農林猟物は、 世界の『持つ者』たちの間で高く取引される。 そして今、里山という資源はどこも荒廃しており 『格安』で購入する事ができる。

もう一度言おう。高知県東洋町に来て 里山ビジネスのスタートアップを始めたまえ。 そして自身で農林猟資源を持ち、『持つ者』になるのだ。

（・・・・。）

ジビエくん・・・出し抜いていかなければ この先、生きては行けないのだよ。

（この人は一体、何歳なんだッ！？）

まぁ・・・興味があれば ココに連絡したまえ。

 
・
・
・
・
・
・







「・・・とまぁ、そんな話をされまして。」

・・・・・。

でもまぁ・・・『里山ビジネス』だっけ？ それが実現すりゃぁ、この田舎にも雇用が生まれるし、 町全体の農林業被害も減るわけだ。 ぐろーばる・・・なんちゃらってのは俺にはわかんねーけどよ、 俺は応援するぜっ！

「あ、ありがとう。

でも、話のほとんどは里山で行う農業の事で、
やりたかった『狩猟ビジネス』は、なんだかおざなりな感じなんだよな～。」

狩猟ビジネスかぁ～・・・ まぁ、今後里山で仕事するなら、 ハンターが絶対に必要になるからな。 需要はあると思うぜ。

「確かに、ニホンジカの被害は今凄いからね～。
ビジネスとしてのハンターも、今後どんどん増えそうだよね。」

いやいや、 ハンターの仕事はニホンジカの駆除だけじゃねぇぜ。 今後、日本の自然には『あの』動物が戻ってくるからよ、 ハンターはその対抗手段として絶対に必要なんだ。

「・・・・え？その
『戻ってくる』動物って？？」












👉Next：ヒトには限界がある、だから必要再導入論
👉Prev：東洋町へようこそ！
👉オススメ：コメント欄も大荒れ♪オオカミ再導入論
 

👉Next：ヒトには限界がある、だから再導入論
👉Prev：農業は儲かる産業なのか？
👉オススメ：欧州製でありながら格安！？
👉オススメ：スプリンガー、伊達じゃないッ！
👉オススメ：エアライフルの教科書はこちら

[続きを読む]

[続きを閉じる]

＜前回はこちら＞






「お、オオカミ！？」

おう、ここ十数年でニホンジカの数が増えすぎてるって 話は聞いたことがあるだろ？ その対策としてオオカミが再導入されるから、 ハンターの必要性も増すってわけだ。

「いやいやいやいやいや！オオカミが再導入されるなんて
絶対にありえないですから！」

ん？どうしてそう思うんだ？

「オオカミなんて危険じゃないですか！
そもそもシカを減らすなら、まずは
ハンターを増やすべきですよ！」

・・・おいおい、ハンターは 『農林業被害を減らす』ことはできても、 『野生動物の数を減らす』ことはできないぜ？

[続きを読む]

[続きを閉じる]

「え？つまり、
ハンターが増えてもシカは減らないってこと？」

そうだ。 ハンターがどんなに増えても 絶対にシカの数は減らねぇよ。

「絶対ってなんでだよ！
例えばハンターが今の100倍に増えたら、
さすがにシカを減らすことはできるだろ！」

・・・まずよ、 『ハンターが狩猟をする場所』ってどんなところだ？

「そりゃ、『山』だよね？」

それって、車から降りて徒歩何分ぐらいの場所だ？

まぁ、徒歩30分ぐらいじゃないかな？」

そうだろ？すわなち、ハンターが活動できる範囲は、 車でアクセスできる場所から徒歩約30分圏内、 要するに『里山まで』だ。同じ山でも人の手が届いて いない深山（みやま）や高山にはハンターは展開できない。

「いや、俺が普段30分圏内しか移動しないだけで、
他の猟隊はもっと深山まで行っている可能性はあるぞ？」

おいおい、常識で考えてみろよ。 普通、狩猟のために片道何十時間も山道を歩けるか？ ましてや帰りは獲物を担がなけりゃならない。 マタギみたいに山の中に拠点を作って何ヶ月も 狩猟生活をするのならわかるが、休みの日だけ狩猟を するようなレジャーハンターには無理な話だろ。

「まぁ・・・確かに。」

要するにだ、ハンターは野生動物が人間のテリトリーに 進入する事は防げても、深山や高山地帯で増殖する 野生動物の個体数を減らすことはできない。 はっきり言って、ハンターが今の100倍に増えても テリトリー争いが酷くなるだけだ。

よって、自然界の生態系を維持するためには、 自然界の頂点捕食者であるオオカミの存在が 必要不可というわけだ。

「言いたいことはわかったけど・・・やっぱりオオカミはなぁ～・・・・

・・・じゃあ、今よりも駆除活動に支払う報奨金を多く出して
ハンターが深山へ狩りに行くようにすればいいんじゃない？」

それは無理だな。 今の駆除事業は農林業被害を軽減することが目的であって、 その名目で予算が出ている。 生態系保全や希少な植物の保護を目的とした取り組みは 経済的損失がないから予算をつけることはできない。

言い換えれば、現在、駆除活動に支払われている報奨金は 野生動物から人間のテリトリーを守るための『防衛費』だ。

対して深山に侵攻するには莫大な『軍事費』がかかる。 クマの胆が金と同じ値段で取引されていた時代ならともかく、 何のメリットもない侵略行為にカネなんて出せねぇってわけだ。

よって自然界の中のことは、 自然界の中で解決してもらわなければならない。 そのためにオオカミに戻ってきてもらわないといけないわけだ。

「・・・でもさ、それだとハンターは必要ないのでは？
『オオカミが導入されるからハンターの仕事が増える』
って言っていたけど、この話だと野生鳥獣保護管理活動は
オオカミにすべて任せてハンターは御役御免じゃん。」

いや。そこが良く勘違いされているところだが、 オオカミの再導入には オオカミを駆逐するハンターが必要だ。

「え！？え？？
オオカミを導入するのに、
オオカミを殺していいの？？」

そりゃそうだ。オオカミは野生動物を狩って生態系を維持するが 決して『人間のおともだち』ではない。 他の動物と同じように、人間のテリトリーに侵入して食害をもたらす。 すなわち、他の動物と同じように人間界に侵入してきたオオカミは 武力（猟圧）によって排斥しなければならないんだ。

「なるほどね～・・・。つまり、
　①狩猟は人間のテリトリーに野生動物を侵入させない効果は
　　あっても野生動物を減らす効果は無い。
　②もし深山にハンターを派遣する場合は莫大なカネがかかる。
　　しかし、生態系の崩壊は経済的な被害が無いので予算が
　　つけられない。
　③根本的な解決には頂点捕食者だったオオカミの導入が必須。
　④オオカミを導入しても、野生動物から人間のテリトリーは
　　守らないといけないので、ハンターの需要は今後高まる。
ということだね。

う～ん・・・まぁ、オオカミとハンターの必要性はよくわかったけど、
環境省はどうして「ハンターを増やす！」とだけしか言わないんだろう？
ハンターが増えても生態系を維持できないことがわかってないのかな？」

いや、環境省はわかっているさ。 ただ、オオカミと同様に効果的とされる『毒薬散布』の話を含め、 反発を受けるのが必然だから 問題から逃げているだけだ。

まぁ、この行政のおかしな態度は、 国民の野生鳥獣に対する『認識の低さ』も原因だ。 日本の野生鳥獣保護管理活動は欧米よりも10年遅れているって 言われているが、それは科学や技術的な面ではなく、いまだに 「人間は自然を支配できる、危険な生物は殲滅すべし！」 という『人間万能論』的な傲慢な考えや、 「動物さんはお友達、守ってあげないといけない！」 という『動物愛誤』的な考えがまかり通っている 思想の遅れに問題があるといえるな。

👉Next：田舎に部屋を探すのって難しい
👉Prev：国内での販売は中止になりましたが・・・
👉オススメ：もっと詳しく、オオカミ再導入論

＜前回の続き＞

なんや知らんけど、 難しい話しとるなぁ。

「！？」

・・・・ん？ おう！遅かったじゃないか。 待ってたぞ。

「ええっと・・・こちらの方は？」

ああ、こいつは『ヘラ』。 こう見えても、この町で民宿を経営する実業家でな。 今日の家探しのために呼んだんだ。

あんた、東京から来たジビエってやっちゃろ？ ロキのオッサンから話は聞いとるで。 今日はあたしが知っとる物件を色々と紹介したるからな。

「それはありがとうございます。ヘラさん。」

なんや堅苦しいなぁ～ 気軽に『ヘラ様』って呼んでや。

「いやっ！なんで偉くなってんだよ！！て言うか、
物件探しなら不動産屋に行ったほうがいいんじゃないの？」

何いうとんねん。 こんな田舎に不動産屋なんてないで。

[続きを読む]

[続きを閉じる]

「え？そうなの？？」

東洋町の人口は3000人以下やで。 そんな小さな町に不動産屋なんてあるかい！

「じゃあ、なんであなたはこの町の物件のことに詳しいの？」

そりゃ私が『DIY』で 物件の賃貸業もやっとるからや。

「DIY?」

資産価値の下がった物件を安く買って 自分でリフォーム＆リノベーションして 賃貸にするビジネスや。

「え？自分でリフォームするの？
業者に任せたほうが良くない？」

あほぉ！いくら物件がタダみたいな値段で買えたとしても 業者にリフォーム任せたら何百万ってかかるんやで！ そんなにカネかけて、何年かけて家賃で回収すんねん！！

「そんな事、よく個人でできるねぇ・・・。」

難しそうに聞こえるかも知れへんけど、壁紙や床材、フロアマットなんかも ホームセンターに行ったら売っとるからな。 私みたいな女手一つでもできるんや。 最近は週末でDIYをやるサラリーマン大家や主婦大家も 多いんやで！

「でも、わざわざこんな田舎で賃貸業をやらなくても、
東京や大阪でやったほうがいいんじゃない？」

都会の物件なんて高くて買いきれるかい！ まずは田舎で地道に家賃収入を増やして、 資本が増えてきたら都心にRCマンションを買い、 ゆくゆくは家賃収入だけで悠々自適に暮らすんや！

「でも、田舎で借り手なんてあるのか？」

そりゃ、Iターンで戻ってくる人が家を探す事もあるし、 最近はアンタみたいな移住者が増えてきてるしな。 田舎は一度物件に入ると出て行くことがないから リフォームと営業ができれば、案外安定した収入になるんやで。

「ふ～ん・・・田舎で賃貸業ねぇ。」

おーい、一軒目ってここかぁ？

「・・・これ、人が住めるの？」

なにいうてんねん！ 数年前まで人が住んでた物件やで！ 掃除したらまだまだいけるわ。 月5000円と家賃も激安や！

「一応、収入の目処はあるから、
もっと家賃は出せるわ！！」

なんや。無職のオッサンと思ってたけど 仕事あるんかい。なら、もうちょっと高い物件を 紹介するで。

 

二軒目って、ここかぁ？

ここはええでぇ～！ なんと2階建て、5LDKやッ！ この広さでなんと月2万！ もう決まったも当然やな！

「い、いや～・・・なんかこの家、ガラスとか割れてますよ。
壁に穴は空いてるし、部屋の中に水路から上がってきた
サワガニの死骸が散らばってるし・・・」

安心せい！この町は 住宅の修繕費に20万円の補助金が下りるからな。 ガラスぐらいサラ（新しい）をはめれるわ。 壁もパテを詰めとけばええやろ。

「そもそも家が大きすぎる！
一人暮らしに４LDKなんて必要ないわ！！」

なんや。家族でも連れてくるんかと おもっとったが独り身かいな。 なら、ちょっと狭いけど綺麗な部屋を紹介するで。

三軒目って、ここかぁ？

この物件は虎の子や！ 月3万の家賃で、 このクオリティーは他にはないでぇ！！

「う～ん・・・作りは古いけど、内装はまぁまぁだし特に問題はない・・・

・・・・・ただ。」






「なんで空き家なのに物が転がってるの？」

そりゃ、前に住んでた人が、 夜逃げしたか無縁仏になったんやろ。 田舎じゃよくある話や。 部屋にあるもんはまだまだ使えるし、なんも問題ないやろ？

「ダメダメ！絶対に無理！
・・・ほ、ほら、僕、銃砲所持者だから、
セキュリティに問題ある部屋はダメなんだよ！」

・・・あのなぁ、アレもだめこれもダメって、 田舎には東京みたいに沢山物件は ないんやで！

「この少子高齢化の世の中、空き家がないってわけはないだろ！」

いやいや、確かに『人の住んでいない家』は沢山あるんだが、 『人に貸せる家』ってのはそうそう無いんだぜ？

「どういうこと？」

例えば、1年で360日間は留守にしていても お盆の5日間だけ帰ってくる家や。 普段は都会で子供と同居しているけど、家に『仏壇』があるから、 墓参りの時だけ帰ってくるっていうことも多いんやで。

他にも、田舎の物件は 『誰の所有物かわからない』って場合も多い。 大昔にわけのわからない契約書を交わしており、 人に貸すことも取り壊す事もできない家ってのが多いんだ。

「い、田舎ってめんどうくさすぎる・・・」

せやから、当座は１軒目か２軒目の家に住んで、 じっくり他の物件を探せばええやないか。 別に敷金・礼金は取られんのやし。

「う、うう～んん・・・・・」

おー、地主のお婆でないかい。 いやね、この兄ちゃんが今度こっちに移住してくるから 家をさがしてたんや。なかなかいい家が見つからんでね～。 お婆、どこか空いてる家しらないかい？

家・・・・？ 小さい部屋なら一つあいちゅーが、 みてみるかい？

「部屋・・・？」



「って、うおおおお！
す、凄くきれいじゃないですか！！」







「１LDKでキッチンも無茶苦茶広い！
しかもトイレはウォッシュレット付き、フロはユニットバス！！
これで家賃はいくらですか？」

狭い部屋だからねぇ・・・・２万でええよ。

「安い！狭いったって、
一人暮らしの僕には丁度いい広さですよ！」



 

へぇ～・・・こんな部屋があるなんて知らなかったな。

お、お婆、なんでこんな綺麗な部屋、 貸しに出さんかったんや？

いや～、見ず知らずの人に貸して 近所とトラブルになると嫌だからね。 そこの兄やんはフェン君の知り合いみたいやから 貸してもえーよ。

「え？どういうことですか？」

田舎の人はなぁ、家賃収入で数万円を得るより、 近隣の人とトラブルを起こしたくない って考える人も多いんや。 特に高齢者の大家さんには良くある話やな。

「都会とは違って田舎では、
何世代にも渡って人付き合いがあったわけだし、
見ず知らずの人を入れてトラブルを起こしたくないって考え方は
わかるような気がします。」

なんで、田舎に移住したい場合は ①役場に市町村が管理している空き物件がないか交渉する。 ②地元の有力者と知り合いになって縁故で物件を探す。 しか方法が無いってわけやな。

「なるほどね～・・・。
いや～しかし、良い物件が見つかってよかったですよ！
こんな綺麗な部屋、東京なら５万はしますよ！」

ほお～、兄やん、東京からきちゅー？ 都会から移住者が増えて、この町も活気が出るねぇ。 この部屋、自由に使ってもらっても構わんよ・・・・

👉Next：処女作、出版ッ！
👉Prev：ヒトには限界がある、だから必要オオカミ再導入論
👉オススメ：カサゴのように、岩の中に住みたい。