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11月某日 「ういーっす。」
(・・・・。)  | あと、草刈り機持ってきて このあたりに道を作っておいてくれや。
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「ういーっす。」 (・・・・あれ?俺なんで、 こんな山の中で土木作業を やることになったんだっけ?)
~数週間前~
「あの~、すいません。 この前、わな猟の免許を取得した者なのですが。」
 | ああ、ジビエさん。 どーもどーも、 どうかされましたか?
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「試験の時に『罠を無償で貸してくれる』って聞いてたので、 お借りしようと思いまして。
・・・ちなみに、どんな罠を貸し出してくれるんですか?」 | 大型のかこい罠から、くくり罠まで、 罠ならひとしきり用意していますよ!
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「おお!すごいレパートリー!」
 | 大型の箱わななんて、買うと数十万円もしますからね。 ハンターさんに獣害を抑えてもらえるよう、 私たちも頑張って支援しますよ! それで、どの罠が必要ですか? 必要であれば複数貸し出すこともできますよ。 | 「ええ~っと、そうだなぁ。 この中で『一番獲物がとれる罠』って何ですか?」 | んんっ!?ジビエさん、 そんな罠なんてありませんよ。
| 「え?それってどういうことですか?」  | 罠は使う場所と獲物の種類で使い分けないと 性能を発揮することはできませんので、 ➀どのような土地にかけるか? ➁どのような動物をターゲットにするか? ➂気候や地質 ➃ターゲットのスレ具合 などをよく考えて選んでください。 『万能に使える罠』なんてものは存在しません。 |
「ああ、なるほど。 そうですね~・・・僕は農地を持っているわけではないですから、 かける場所はやっぱり”山”になりますね。 ターゲットはイノシシやシカを考えています。」
 | それなら”くくり罠”がベストですね! くくり罠であれば、山での持ち運びも簡単ですし、 土地の状態に応じて最適な状態に組み替えることができます。 いくつか資材や工具を提供いたしますよ! | 「これはありがたい!色々試してみます!」 | しかし・・・くくり罠は、わなの中でもかなり熟練した 技術が必要になります。 誰か師匠となってくれる人がいればいいのですが・・・。
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 | あ!土蜘蛛(つちぐも)組の親方さん! こりゃ適任だ!ジビエ君、くくり罠について、 この人のもとで色々学ばせてもらうといい! |
「えっ!?」来週から始まる奥山での工事の人手が足りてなくてね。 色々教えてやるから、しばらくうちの組で働いておくれ。 なぁに、2,3カ月ほど山で土木作業をやってりゃ くくり罠の基本はマスターできるよ。
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「い、いや、ちょっと待ってください! くくり罠の仕掛け方なんて、 インターネットで調べたら、いくらでもわかりますよ! わざわざ土木作業を手伝う必要なんてありませんよね!?」ふう~ん。インターネットで調べただけのことで、 山で狩猟ができるってのかい? それならこのロープで『引き縄結び』を作ってみな。 それと『巻き結び』だ。 どちらも罠猟において必須のロープワークさ。
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「え?え?引き縄?巻き結び?」
いいかい、罠猟は基本的には単独行動だ。 よって人間が山で動き回るために必要な技術 は最低限身に着けておかなくちゃならない。 確かにインターネットには罠をかける技術はいくらでも 転がっているだろうが、実戦的なテクニック は体で覚えるしかないんだよ。
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「う、ううむ・・・確かに。 これまでは、動物の見切りにしろロープワークにしろ、 人任せでやってきていましたから、そろそろ実戦的なテクニックを 身に着けておかないといけませんね。
でも、僕、 やらないといけない仕事がありますし・・・。」
ん?あんた普段は何の仕事をしてるんだい?
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「本を書いてるんです。 これでも一応、作家なんですよ。」
本を書いてる作家?なんだ、じゃあ 無職みたいなもんじゃないか。 現場は来週始まるから、必ず来るんだよ。
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「・・・・。」 (つづく!)
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