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<前回はこちら> 「よいしょ・・・よいしょ・・・っと。」 | ん?ジビエ君。こんな山奥に罠を仕掛けているが、 何か戦略的な根拠はあるのか?
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「え?まぁ特に理由はないんですが、なんか うっそうとした森の方が獲物も多そうじゃないですか!」 | ・・・そんな曖昧な話じゃ 何年罠を仕掛けていても獲物はかからんぞ! 今、罠をかけるのならこっちの方がいい。
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「・・・えっ?くくり罠って こんな人里近い場所に仕掛けるんですか?」
「でも山奥の方が野生動物は多いだろうから、 そっちに罠をかけた方がいいんじゃないですか?」 | いいか、くくり罠は 獲物が『居る』ところに仕掛けるのではなく、 獲物が『通る』ところに仕掛ける罠だ。
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 | イノシシやシカには『休息する場所(寝屋)』と 『餌を食べる場所(食餌場)』がある。 くくり罠は、この通り道に仕掛けるのが戦略の基本だ。
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「なるほど。今回はすでにこの近辺の畑で『食害が出ている』ということ が判っているから、里山と畑の境界がくくり罠を仕掛ける最適な場所 だといえるんですね。」
 | ちなみに農地以外の食餌場についてだが、 イノシシは食べる餌にローテーションがあるので、 『ドングリが溜まる場所』、『タケノコが生える場所』など、 食餌場は時期ごとに変わっていく。 シカの場合も、初めに優先順位の高い青草や笹の生息地が 主な食餌場になり、これらの餌が枯渇しはじめると植林地で 優先度の低い樹皮などを食べるようになる。 くくり罠はシーズンを通して同じ場所に仕掛けておくのではなく、 ターゲットの食餌の状況を見て場所を移していくのが重要だ。
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 | では次に、具体的にどこに罠を仕掛ければいいかという話だが ・・・・ジビエ君は『見切り』はできるかね?
| 「『見切り』っていうと、獲物の一番新しい足跡を見つけることですね。 それなら昔、巻き狩りをやっていたころに教えてもらったので大丈夫です!」 | ふむ・・・しかし、 『くくり罠の見切り』と 『巻き狩りの見切り』は 見るべきところが違うので注意が必要だ。
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 | まず、巻き狩りの見切りでは、獲物がその日、 確実に潜んでいる山を探すのが目的だ。 そのため足跡は『昨晩付いたもの』を調査しなければならない。
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「確かに巻き狩りのときは、フィールドサインの時間推定の方法を 細かく教えてもらいましたね。」  | 対して、くくり罠の見切りでは、 ターゲットの群れが常用している通路を探すのが目的だ。 すなわち調査すべきなのは『足跡の新しさ』ではなく、 『足跡の数:群れで移動していること』や 『足跡の向き:登りと下りの足跡があること』になる。 巻き狩りのときのように足跡の新しさばかりに気をとられて いると、『クローラー(はぐれ者)』に振り回されるので 注意しなければならないぞ。
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